【BL感想】引き摺るほど与う

■良すぎて衝撃を受けた作品
商業BL漁りを趣味にしていると時々衝撃を受ける作品に出会うことがある。
これはその作品の一つ。
引き摺るほど与う
頼長先生を初めて認識した作品です。
一話を読んだ感想としてはまず、「こんな素敵な作家さんいるんだったら早く教えてよ〜!」でした。
なんでみんな教えてくれなかったの?それともこの作品が処女作なの?
BL作品を嗜むときはほとんどコミックシーモアで購入しています。クーポンも割引も多いし試し読みができるのが電子書籍のいいところですよね。紙媒体で買っていた十代の頃はジャケ買い、衝動買い、作家買いしかできなくない??(知らんがな)

■あらすじ
あらすじなんて書きたくねえ〜!なんでもいいからラーメンやらスイーツ食べるそのお金で今すぐこれを購入してくれ
購入した人類に損はない(クソデカ主語)
女性限定添い寝リフレをバイトにしている大学生の慎二が、ある日店側の手違いで男性客の相手をすることになってしまう。
断ろうとするも一方的に電話を切られ腹を括って対応するところから始まります。
「起」の部分が美しすぎない?
頼長先生の他の作品も愛なのですが、特殊設定が多いですよね。
で、この設定の説明が巧みすぎる。添い寝リフレは慎二がそれを設定しているだけで、本当はもっとディープで性的なサービスを提供することができる。
しかし慎二はそれを全部NGにして「添い寝」をメインとしている。
どういうサービスなのかを説明すると同時に慎二のちょっと潔癖な性格がうまく示されているな〜と感嘆しました。頼長先生はこういうのがめちゃくちゃうまい作家さんで絶対に裏切られない。
初めて会った客の良さんは、なんでこの人が添い寝リフレを?と疑問に思うくらいイケメン。少しでいいから、と少しずつ絆され本来はNGにしていた行為を彼に対してだけ許してしまう。
清潔感のあるイケメンが自分を求めている優越感に浸っているうちに戻れないところまできてしまう……という話です。
このあとのすったもんだの良さは筆舌に尽くし難い……やっぱり全腐女子読んで……

■地味な自分に対するコンプレックス
慎二は「地味顔だから」という描写が何度も出てきます。
自他ともに地味と評価されていることに対して強いコンプレックスが示される。
慎二が、顔がいい良さんにだけ許してしまうのはこれがあるからなんだな、という裏付けがあって良いんですよ。
いっそ同性だからこそ、コンプレックスからくる優越感が気持ちよくて、潔癖なのに許せてしまう。
……こんな美しいBLある?
元々ゲイセクシャルの良さんとは違って、潔癖ノンケの慎二が落ちる要素がここにあった。そりゃ落ちるよね〜……わかるな……
BL漫画って作画がいいので地味顔設定ってあまりピンとこないことが多いのですが、慎二が地味顔なのは分かる。画力高い。
地味だから身なりに気をつけてるし潔癖なんだろうな。
大学の同級生に「顔は地味系だから」「美人は美人を選ぶじゃん」と言われるシーンはBL漫画ながら心に刺さるものがあります。それ以上言わないでくれ。
こんなに地味な自分をいつまで良さんは選んでくれるのだろうか、と思い詰めた慎二は突然店をやめて良さんから離れることを選ぶ。卑屈なまでの性格はこういう体験を何度もしてきたから、自分を本心から選ぶ「美人」なんていない、失うくらいなら手放してしまいたい。
こう書くと粘着質でなよなよした受けに見えるんだけど全然そんなことないの〜!
サッパリしてるしそういう自分を理解して冷静に分析している。慎二のそういうところが好きだよ。
頼長先生は心理描写を吹き出しでロジカルに描く印象があるんですが、それが説明的でなくて絶妙なんですよね。
こんなバランスでBLを描く作家さんは正直他にいないんじゃないか?本当に稀有な作家さんだし大好きすぎる。
個人の感想です。
結局は客としてだけでない好意を持つ良さんを信じることができず(ずっとお客さんとしてお金払ってルール守ってるんだよ〜!めちゃくちゃいい)遠ざけることを決意するシーンがめちゃくちゃいいんですよね、映画的で。
俯いた眼鏡のレンズにぽとっと涙が落ちるわけですよ。
私自身裸眼で2.0ほどあるので眼鏡やコンタクトに疎い人生なのですが、ほあ〜なるほど……と感心しました。嘘です。さいきんはちょっと視力落ちました。残念。

■お仕事シーン大好き
世間の片隅にお邪魔している社会人腐女子なのでお仕事のシーンが大好きです。
十年前は高校生のBLが大好きだったんだけどな〜……と思うと壮年になったら壮年期のBLが大好きになるのか?一生腐女子でいよう。
頼長先生のお仕事のシーン大好き!!
IT企業にSEとして勤めることになった慎二。直属の上司に紹介してもらったのが一年かけて忘れたあの良さん……という再会なのですが、新入社員が入れ込んでたキャストってお互いに気まずくない!?と、まず現実的な思考に至る慎二。こういう「何はともあれ」な考え好きです。
すったもんだで無事蜜月となるのですが。
なるのですが。
人類は刮目した。
白抜きの奥を見ようと目を凝らした。
めちゃくちゃすごいです。本当にそう。
本当にすごいから今すぐ読んで欲しい。
まだ間に合います。
何度も読んでるのにすごすぎてめちゃくちゃ目を見開いてしまう。
いや最初からすごいんだけど。
読み進めるうちに淡白な印象を抱かされる二人なので、こんなにすごいことになっちゃうの!?という驚きがひとしお。
ねえ〜好きなコマを拡大して「これのここが最高じゃない〜!?」っていう遊び私としませんか。
お仕事シーンの話をしたかったはずが脱線甚だしい。
お仕事のシーンってちゃんとわかってないと細かいセリフひとつに微妙な違和感が生じると思うのですが、まじでそこんとこないからこれ。よろしく。
慎二といちゃつくためだけに職場環境の改善を決意する良さん、マジいい上司。
実力はあるけど迫力のある美人だからつい怖く見える良さんが、唯一慎二のアドバイスを素直に受けとめるのもすごい。いい上司の素質じゃん。

■長くなったけど……
要するに買おう。そして読もう。
コマ拡大して「ここが好き〜〜!」て語り合いながら酒を飲んでへべれけになりたい。そんな作品です(そんなことない)
しっぽり読める作品なのでぜひ。
頼長先生の絵が大好きです。
は〜〜〜〜〜〜〜〜〜一生読も。